即興の生み出す偶然性、自らの心理状態、精神のありさまを託した表現は、画家自身が持って生まれた感性と人生経験を経て磨き上げられた美意識のうつし鏡のようである。
大胆に振りおろされたストロークには、生命力があふれ原色カラーが入り混じる。
今しがた描き上げられたような臨場感を見る者にもたらすことだろう。胸元に輝く宝石は、キャンバス上の豊かなアクセントであると同時に、作者のジュエリーアーティストとしてのもう一つの顔を象徴している。
現代を生きる新時代の女性像を自ら精神性の投影によって豊かに表現した傑作である。
文/日欧宮殿協会 日本事務局長
「現代人気美術作家名鑑」掲載
インターナショナルアーティストの横顔
国際画廊連盟選考「年間グランプリ インターナショナル部門」受賞記念
“佐伯和子の芸術世界”
“ドラマチックな光と色の調和が冴える”
対峙する人々全てに、明朗な希望と多幸感をもたらす、五彩の輝きに満ちた「最初の樹」。天与の色彩感覚の自在な発露、その優雅で柔軟な表現は、虹色の光で、私達の魂を浄化する。いちじくの樹に、アダムとイブの神話を象徴させた、発想の秀逸も素晴らしい。生命創生の劇的な色のドラマは、息をのむ美しさと、無類の親しみを湛え、作家の画風の新鮮な領域を開示したと言える。また本作は背景効果も含め、水色の絶妙な配色が作品の聖性を高め、忘れがたい感動を誘う。
「光輝」は、花の美しさを原色の集散するエネルギーと、陽を受けて、それぞれの色が輝く態を静物画の様式美の中に、抽象的な色の表現で再構成。配色の華麗と、リアルな花の存在感が見事に調和し、画家の表現衝動の多彩を鮮明に伝える名作である。特筆すべきは、陽光のプリズムを絵具に用いたような独自の輝きだ。陽光のきらめきを立体化する下方の紙片の重ねた部位の工夫、斬新さにも驚きがある。
赤サンゴやパールの存在感を包容する青のトルコ石、ブルーオパールの光沢が目に優しい。「光る海」は、ジュエリー表現でも、重要な地歩を占める作家の美質が集成された神品である。技巧の洗練に加え、自然(の色調を大切にする)への慈愛を感じさせる、意匠の細部へのこだわり(光沢の調和の見事さ)が、美しい。
文/クリスティーヌ・モノー